ニキビとは

ニキビは思春期以降に生じる顔、胸、背の毛包脂腺系に生じる、脂質代謝異常、角化異常、細菌の増殖が複雑に関与する「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚の病気です。
ニキビの特徴はある年齢まで繰り返すこと、様々なニキビ痕が生じやすいことです。
日本では、90%以上の人が経験する病気から「ニキビは青春のシンボル」と言われ、これまでは病気との認識が少なく、皮膚科を受診する患者さんは10%ほどしかいません。

ニキビで一番困るのは、軽症の症状でも瘢痕(へこみ、隆起、色素沈着、紅色丘疹)が生じやすいことです。瘢痕により、ニキビ患者さんの生活の質(quality of life: QOL)が低下することが重大な問題になっています。
さらに、一旦できた瘢痕を綺麗に治すことは非常に難しく、多くの患者さんがQOLの低下で悩んでいます。
従って、現在では「ニキビは青春のシンボル」ではなく、「早期に皮膚科で治療することが必要な皮膚病」と認識することが大切です。

ニキビの原因

1.毛穴がつまる

毛穴を形成する皮膚のケラチノサイトの増殖と角化亢進して、皮脂の排出が妨げられ、さらに皮脂の分泌増加も加わり、毛穴が閉塞します。

2.皮脂分泌の亢進

A)男性ホルモン(アンドロゲン)

男性ホルモン(アンドロゲン)が皮脂分泌を促進し、ニキビの新生、悪化を生じます。

B)黄体ホルモン

黄体ホルモンは皮脂分泌作用があり、生理前に増加することにより、ニキビが悪化しやすい。

C)ストレス

現代社会はストレス社会と言われ、社会生活していくうえで密接に関与しています。ストレスを受けると、脳内の視床下部において
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が成され、CRHは脳下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌細胞のCRH受容体に作用し、ACTH,β―エンドルフィン、α―メラニン刺激ホルモンの分泌を惹起します。脂腺細胞はCRHやACTHの受容体を発現し、ストレスなどにより日内変動のあるホルモンがニキビに影響するとの報告があります。

皮膚に対するストレスは、外的と内的とに分けられます。外的ストレスは紫外線、空気の乾燥、衣類の摩擦などあります。内的ストレスには、疲労、食生活の、乱れ、睡眠不足、人間関係などの精神的ストレスなども含まれます。

ニキビの種類とニキビ痕

ニキビは、非炎症性ニキビ(白ニキビ、黒ニキビ)と、炎症が加わった炎症性ニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ)に大別します。

1.微小面皰(びしょうめんぽう)

ニキビの皮疹に先行して生じる病理組織学的(顕微鏡レベル)な変化です。毛穴が閉塞し、皮脂がつまっています。症状がなくてもニキビの皮疹の周囲にあることが知られており、微小面皰に対する適切な治療を続けることが維持期の治療として重要です。

2.面皰(めんぽう)

A)白ニキビ(閉鎖面皰)

毛穴が角栓により閉鎖され、毛包内の皮脂貯留により毛穴が軽度隆起します。

B)黒ニキビ(開放面皰)

明らかに毛穴が開大し、毛穴に貯留した皮脂が酸化され、黒色にみられる。
次に、上記の面皰に炎症性変化が加わると、赤ニキビ、黄ニキビに進展します。

3.紅色丘疹(赤ニキビ)

面皰の内部でアクネ菌が増殖して、炎症が生じて、毛穴、その周囲が赤く腫れてきます。

4.膿疱(黄ニキビ)

赤ニキビ内で、アクネ菌がさらに増え、リパーゼ産生、遊離脂肪酸が発生、好中球の浸潤、自然免疫の発動、プロテアーゼの発動などで毛包壁が破壊、炎症反応の拡大が生じます。

5.嚢腫(のうしゅ)

炎症性ニキビがさらに悪化し、皮膚の深部(真皮内)で、線維性の膜を持った嚢腫を形成してきます。
次に、炎症性ニキビが治った後に生じるニキビ痕を紹介します。

6.炎症後紅斑

炎症性ニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ)の改善後、局所の血流増加に伴う紅斑が持続する状態です。

7.炎症後色素沈着

炎症性ニキビの改善後、毛穴一致して色素沈着が生じます。

8.萎縮性瘢痕

炎症性ニキビ、非炎症性ニキビの改善後に残存する、陥凹性の瘢痕。形態からアイスピック型、ローリング型、ボックスカー型があります。

9.ケロイド

炎症性ニキビの治癒後に赤みを伴って隆起してくる状態。

ニキビ治療

当院では日本皮膚科学会策定の「尋常性ざ瘡ガイドライン2017」に基づく治療を実施しています。ガイドラインとは、治療実績のデータ(エビデンス)に基づく適切かつ標準的な治療法の選択基準を示し、治療レベルを向上する目的の治療指針です。

炎症性ニキビと非炎症ニキビの治療に大別します。さらに、急性炎症期と維持期とに分けた治療指針が記載されています。

ニキビで受診される患者さんは、ほとんどが赤ニキビ(炎症性ニキビ)です。ニキビは
炎症性ニキビを早く治すことが、すごく大切です。また、ニキビは慢性炎症性疾患ですので、軽快後に治療をすべて止めてしまうと、また、すぐにニキビが再発しますので、良状態を維持する維持期の治療も重要です。

A)外用剤

「ニキビの根本原因は毛穴のつまり」なので、
角質をはくりする作用の薬剤が中心で重要です。日本では、諸外国からかなり遅れてから、根本的治療用の外用剤が認可されました。
2005年から近年にかけて、ようやく4種類の外用剤がラインアップしました。

  • ディフェリンゲル(アダパレン)
  • ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)
  • デュアック配合ゲル(過酸化ベンゾイル/クリンダマイシン)
  • エピデュオゲル(ディフェリンゲル/過酸化ベンゾイル)

B)内服薬

1.抗生剤
  • ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
  • ミノマイシン(ミノサイクリン)
  • ルリッド(ロキシスロマシン)
  • ファロム(ファロペネム)
  • アクロマイシン(テトラサイクリン)
  • エリスロシン(エリスロマイシン)
  • クラリス(クラリスロマイシン)
2.漢方薬
  • 荊芥連翹湯
  • 清上防風湯
  • 十味敗毒湯
  • 黄連解毒湯
  • 桂枝茯苓丸
3.ビタミンその他
  • ビタミンB2
  • ビタミンB6
  • ビタミンC
  • ハイチオール