単純疱疹(ヘルペス)について

疲れているとき唇のまわりにピリピリと痛い水ぶくれができる、口内炎、性器に水ぶくれや赤いブツブツができる、排尿痛、ムズムズする性器のかゆみや痛みが繰り返し現れる・・・その症状、もしかしたら「ヘルペス」かもしれません。

ヘルペスってどんな病気?

「ヘルペス」は、皮膚に小さな水ぶくれが集まった皮膚病で、単純ヘルペスウイルスによる感染症です。単純ヘルペスウイルスは比較的多くの人が感染しているウイルスです。単純ヘルペスウイルスはいくつかの種類があり、感染したウイルスによって異なった症状が現れます。一度感染すると、症状が治まった後でも体内に潜伏し、抵抗力が落ちた時などに再び症状が現れるのが特徴です。その中でも多い口唇ヘルペスと、乳幼児でみられるヘルペス性口内炎、性感染症の1つである性器ヘルペスについて解説します。

口唇ヘルペスってどんな病気?

口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型によって起こる皮膚病です。唇や口の周りの皮膚にピリピリ、チクチク、ムズムズといった不快感や違和感があり、数時間~数日すると赤くなり、水ぶくれができます。患部には痛がゆさやほてりなどがあり、やがてかさぶたになり、10日~2週間ほどで皮膚症状は治ることが多いといわれています。
初めて感染した時は、発熱やリンパ節が腫れるなどの症状が出ること多いのですが、再発の場合には症状が軽くなることがほとんどです。
口唇ヘルペスの感染は、ヘルペスに感染し、発症している人との接触や飛沫感染(咳やくしゃみなどによって飛び散ったウイルスが口や鼻などの粘膜に触れて感染すること)がおもな原因です。直接患部に触ったり、ウイルスがついたサングラスやタオルなどを共有したりすることにより感染する場合もあります。患部を触った手で身体の他の部位を触ることにより、他の部位も感染してしまう可能性もあります。

口唇ヘルペスってどんな病気?

1~3歳くらいの乳幼児で咳や鼻水などの症状がないのに、突然高熱がでて、その後に唇や舌、歯茎にまで口内炎ができていたら、「ヘルペス性口内炎」の可能性があります。
ヘルペス性口内炎は、単純ヘルペスウイルス1型に乳幼児が初めて感染した時に発症します。口唇ヘルペスと同様に人との接触や飛沫感染、タオルなどの共有に注意が必要です。他の人にうつす可能性があるので、症状がなくなるまで外出は控えた方がいいでしょう。熱が下がって、入る元気があれば入浴しても問題ありません。また、歯茎から出血することがあるので、歯茎の炎症がおさまるまで歯磨きはしないほうがよいでしょう。

性器ヘルペスってどんな病気?

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス2型の感染によって起こる皮膚病で、性感染症の1つです。
症状が出る部位として、男性の場合は、亀頭や陰茎体部がもっとも多く、太ももや臀部、肛門周囲、直腸粘膜に出ることもあります。女性の場合は、外陰、腟の入口、臀部が多く、子宮頸部や膀胱まで感染が広がることがあります。1型を持っている患者さんがオーラルセックスをすることでパートナーが2型に感染してしまうケースもあります。若い女性の方に多く、性感染症の中でも増加している病気の1つです。
性器ヘルペスの症状は、水ぶくれが性器とその周辺にできます。初感染時には、患部にヒリヒリ感、むずがゆさを感じ、高熱を伴うこともあります。赤いブツブツができ、水ぶくれになってからただれてきます。また患部に激しい痛みを感じ、女性の場合は排尿時に痛みを感じることもあります。脚のリンパ節が腫れる場合もあるので、排尿困難、歩くのが困難な痛みの時は、入院しなければならなくなります。初感染から4~10日の潜伏期間の後に発症するといわれていますが、初感染では症状がみられずに、一定の潜伏期間を経てから初めて発症する患者さんもいます。自覚症状があるのに本人は気づいていないケースも約60%の患者さんでみられます。
また、妊娠中に性器ヘルペスを発症した場合、新生児が単純ヘルペスウイルスに感染し死亡してしまう可能性がありますので、早めの対処が必要です。
症状が現れた時は、皮膚科や泌尿器科を受診します。女性の場合は婦人科を受診した方がよいでしょう。病変部の皮膚や粘膜、分泌物を綿棒でこすり取り、検査を行います。また、血液検査でウイルス抗体を調べる場合もあります。

単純疱疹の再発は?

およそ80%の患者さんが初感染から1年以内に再発するといわれています。また、女性では月経が再発のきっかけになることがあります。

単純疱疹の治療は?

単純疱疹を完治させる薬は、残念ながらまだありません。抗ウイルス薬の内服薬と外用薬で症状が出ている期間を短くする治療を行います。痛みに関しては鎮痛剤を使い、細菌感染の心配がある場合は抗生物質を使用します。

単純疱疹の症状が現れている時に注意すべきことは?

  • 患部に触れたタオルは洗濯をして、日光にあてて乾燥させましょう。
  • 他の人と同じタオル等の共有をしないようにしましょう。また、飲みかけ、食べかけのものをあげたりしないように気をつけましょう。
  • 症状が出ているときはパートナーとの性行為やキスは避けましょう。
  • 妊娠中の女性で、性器ヘルペスの症状が現れた場合、出産する際に新生児への感染を避けるために、帝王切開する場合があります。症状が現れた場合には、すぐに医師に相談してください。

単純疱疹の再発を防ぐためは?

  • できるだけ疲労をためないようにしましょう。
  • できるだけストレスをためないようにしましょう。
  • バランスの良い食事を心がけましょう。
  • 適度な運動、十分な睡眠で免疫力の低下を防ぎましょう。
  • 帽子やマスクをこまめに着用し、直射日光を浴びないように気をつけましょう。
  • アルコールの過剰摂取は再発のきっかけになりますので注意しましょう。