乾癬について

肘や膝、腰まわりに赤い発疹ができ、表面に白っぽいフケのような粉がついている…、その症状、乾癬(かんせん)という皮膚疾患かもしれません。乾癬は症状によっていくつかのタイプがありますが、およそ90%の乾癬患者さんが尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)です。ここでは、尋常性乾癬について解説していきます。

乾癬ってどんな病気?

乾癬は、発疹の症状がよくなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚病です。日本人では人口のおよそ0.1%、10万人以上の乾癬患者さんがいるといわれています。男性の方が発症しやすく、発症年齢は人によりさまざまですが、男性では30歳代、女性では10歳代および50歳代での発症が多いようです。皮膚が乾燥しやすく日差しが少ない冬には症状が悪化します。
乾癬の典型的な症状としては、境界がはっきりした少し盛り上がった赤い発疹の上に白っぽいフケのような粉をふいており、厚いかさぶたとなってボロボロと剥がれ落ちるのが特徴です。大きさ、数、形はさまざまで、発疹同士がくっついて大きな病変を作ることもあります。人によって症状や発症する部位はさまざまですが、肘、膝、腰まわりなどの衣服などで擦れるところと、頭部にできやすいようです。およそ50%の患者さんでかゆみを伴いますが、乾癬のかゆみはそれほど程度が強くないことが多いです。乾癬の皮膚症状は、通常、内臓を侵すことはありません。
乾癬のほかの病型には、爪の変形や関節炎を伴う「関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)」(乾癬患者さんの10人に1人くらい)、発疹が全身におよぶ「乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)」(まれ)、扁桃腺炎(へんとうせんえん)後に雨のしずくのような小さな乾癬皮疹ができる「滴状乾癬(てきじょうかんせん)」(まれ)、重症で入院治療が必要な「膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)」(非常にまれ)があります。

乾癬の原因は?

乾癬になりやすい遺伝的素因にさまざまな環境因子(不規則な生活や睡眠不足、偏った食生活、精神的ストレス、肥満、高脂血症、風邪や扁桃腺炎、喉頭炎(こうとうえん)などの感染症、薬剤など)が加わり発症するといわれていますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。

乾癬はうつる?

乾癬は、感染する病気ではありません。皮膚の発疹に触れたり、温泉やプールに一緒に入ったとしても、他の人にうつることはありません。

乾癬は治る?

乾癬はよくなったり悪くなったりを繰り返して慢性に進行する病気ですが、その患者さんに合った治療を継続して行うことにより、症状のない状態を長期間保つことは可能です。あきらめずに治療を続けて、長期にわたって発疹が出ない状態を目指しましょう。症状がよくなったら、乾癬を悪化させる要因(不規則な生活や睡眠不足、偏った食生活、精神的ストレスなど)をできるだけ避けて再発を防ぎましょう。

乾癬の診断

問診、肉眼による診察と、触診で皮膚の状態を調べます。診断がつけにくい、ごく初期の段階の乾癬の場合には、「皮膚生検」といって、わずかに皮膚をとって表皮や真皮の状態を顕微鏡で調べる検査をすることもあります。

乾癬の治療法

乾癬は、皮膚症状の程度や範囲、部位、患者さんのライフスタイル、乾癬以外の病気の有無、副作用などを考慮した上で、おもに4つの治療法から選択されます。医師の判断により単独で行われたり、組み合わせたりします。

外用療法(塗り薬)

乾癬の治療の基本は外用療法です。治療にはおもに2種類の薬剤が使われます。症状や効果をみながら、単独、あるいは組み合わせて処方されます。

  • ステロイド外用薬
    炎症をおさえるおくすりです。比較的はやく効果が現れます。長期にわたって漫然と使い続けると皮膚萎縮や毛細血管拡張などの副作用が生じる場合もありますが、医師の指示をしっかり守って使用すれば心配はいりません。
  • ビタミンD3外用薬
    表皮細胞が異常なはやさで増殖するのを抑え、正常な皮膚の状態に導くおくすりです。効果が現れるのは比較的遅いです。一度に大量に塗るなどの誤った使い方により、のどの渇き、脱力感、食欲不振などの全身性の副作用が起きることがありますので、医師の指示をしっかり守って使用しましょう。

光線療法(紫外線照射)

外用療法だけで症状がよくならない場合や、発疹の範囲が広がった場合には光線療法が行われます。中波長紫外線(UVB)と長波長紫外線(UVA)に効果が認められています。治療効果の高い波長のみを使う「ナローバンドUVB療法」と、治りづらい部位の治療に有効な「ターゲット型エキシマランプ」も普及してきています。

内服療法(飲み薬)

内服療法では、皮膚細胞の異常増殖を抑えるレチノイド、免疫反応をおさえるシクロスポリンなどの薬剤が使われます。レチノイドは光線療法と組み合わせる場合があります。

生物学的製剤(注射または点滴)

上記の治療で効果がみられない場合には、生物学的製剤が用いられます。皮下注射と点滴(静脈注射)の2種類があります。

上また、かゆみがひどいときには抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などのかゆみ止めの飲み薬が処方されます。関節炎で痛みがひどいときには、痛み止めの塗り薬や湿布、飲み薬が処方されることもあります。

※光線療法、内服療法、生物学的製剤の治療が必要な場合は当院では治療をおこなっておりませんので大学病院を紹介する形となります。